とき :2018年11月29日(木)14:40-16:10
ところ:奈良女子大学 G棟2階 G210
魚類の柔軟で強かな性 — 性転換戦略を中心に
坂井陽一 (広島大学・生物圏科学)
魚類などの水中生物は、子を産み・守り・育てるための体の構造が陸上動物に比べて単純です。そして性を柔軟にあやつる術をもつものが少なくありません。環境に影響される後天的な性決定現象(環境性決定)がさまざまな魚種でみられ、水温や水質などの無機環境が個体の成熟させる性に影響を与えるものと、個体関係に性が影響を受ける社会性決定の2つがあります。性転換は後者にあたります。例えば、多くのベラ類は、最も大きく強い個体がオス、その他の個体はメスとして一夫多妻グループをつくります。このオスがいなくなると、次に強いメスがオスに性転換しグループを引き継ぎます(性転換の社会調節)。脳内で発現する神経ペプチドや、生殖腺で産生される性ホルモンが、性転換の制御に関与していることが示唆されていますが、相互の繋がりに不明な点が残されています。性転換が婚姻社会の形態にうまく対応したデザインになっており、また社会調節により適切なタイミング性転換が発現することで、繁殖機会を確保しつつ、より有利な性役割を選び得ることを可能にしています。生涯を一つの性で全うするよりも、より多くの子孫を残しうるデザインになっています。しかし、個体レベルで詳しくみると、性転換を行うための個体間のかけひきの存在や、性転換を再びやりなおして元の性に戻るような事例もあります。うまくいく時もそうでない時も、魚類は柔軟な性をうまく活用しているのです。今回は、性転換にまつわるトピックを当該研究分野のタイムライン(=私の歩み)に沿ってお話ししたいと思います。
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